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fld_nor.gif 7月号のアンケートについて
投稿日 : 2025/07/09(Wed) 14:43
投稿者 ベンジー
参照先 http://www.benjee.org
 7月号のアンケートに出て来たタイトルの簡単な説明文を掲載します。答えを書く時の参考にして頂ければと思います。
 もちろん、ここにレスして頂いても構いません。
 皆様のご意見ご希望など、お聞かせ頂ければ幸いです。



『平凡OLのVR体験』

一人のOLが、現実で叶えられない性的欲求を、仮想空間で満たす物語。精神科の医療機関である性科学研究所。そこに設置されたVRマシンは、露出衝動に駆られる患者に、その欲求を合法的に満たす場所を与えるかわりに、「リアルでは絶対に実行してはいけない」と露出行動を否定していく。



『はだかのけじめ』

一人暮らしをするOL・希美は、会社とアパートの往復で彼氏もいない。友達もいない。そんな毎日に飽きてネットに刺激を求める。エッチなサイトのアンケートに答えていたら、ある日、知らないアドレスからメールが届く。「ハダカになって、外を歩いてみませんか」。最初はバカげてると無視したが、ずっと気になってならない。希美は、メールに書かれていたURLをクリックする。



『わたしがわたしになる物語』

エッチなことに興味津々の思春期の少女が恥ずかしい目に遭う妄想を思い描きながらも、現実では叶えらない。抑圧された感情を抱えたまま20歳になったヒロインが、その思いを、自分を主人公にした小説の中で叶えたいとChatGPTにリクエストすると……



『裸の街』

女子大生の香織が、友達から「男性との街歩きをするだけでお金がもらえるバイト」を紹介して貰う。セックスはなし、絡みもなし。但し、街歩きには違いないが、それは全裸で歩くと言うものだった。



『AV女優にスカウトされたJDの物語』

街でAV女優にスカウトされて女子大生。最初は人前でハダカになるなんてとんでもないと思ったが、お金も欲しいし、正直、少しだけ興味もある。事が事だけに相談する相手もいない。スカウトから名刺とサンプル動画のDVDを渡され、撮影見学の日時を知らされる。
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件名 Re: 7月号のアンケートについて
投稿日 : 2025/07/13(Sun) 18:47
投稿者 ベンジー
参照先 http://www.benjee.org
7月号のアンケートで書いた5作品の冒頭部分だけアップしました。
それぞれ、こんな感じで始まります、ってところがわかって頂けると思います。
回答の参考にして頂ければ幸いです。
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件名 AV女優にスカウトされたJDの物語
投稿日 : 2025/07/13(Sun) 18:44
投稿者 ベンジー
参照先 http://www.benjee.org
(スカウトって、本当にいるんだ)
 初めて名刺を受け取った時、百合子は、ただただ驚いた。まさか、こんなふうに声をかけられるなんて。
「あなた、向いてると思うよ」
 男の人はそう言って、笑った。品のある笑顔だった。軽い冗談みたいに見せかけて、でも目は本気だった。
 名刺に描かれたロゴは猿真似かもしれない。『MODクリエイト』。大手アダルトビデオ制作会社をもじった社名。つまりそういう会社と言うわけだ。
 AV女優かぁ……
 正直、ちょっとだけゾクッとした。怖い、とも違う。なんだろう。私、そんなふうに見えるのかな。そういう世界に足を踏み入れそうな女の子、に。
 サンプルDVDはまだ見てない。だけどカバンの中にずっと入ってる。気になってる証拠だ。捨てる勇気もないくせに。
 パッケージの彼女。この子もAV女優なんだよね。確かにキレイな子だけど、
 うふふっ、この程度なら負けてないかも……なんて。
 たぶんお金だけが理由じゃない。大学に入って二年目の春、この生活にちょっと飽きてきたのかもしれない。単調な日々、真面目でいることに疲れてきた。
 実家の母が真っ赤になって聞いたら怒るだろうなぁ。何のために東京で一人暮らしさせてると思っているの、なんて。
 するって決めてないけど。
 …もし、見学だけなら。「見るだけ」で終わるなら。
 それなら、別に罪じゃないよね?
 カフェの隅っこ。いつものお気に入りの席。ラテの泡がしぼみかけてるのに、まだ一口も飲んでいない。
 誰にも見られてない。ここにいるのは、私だけ。それなのに、なんでこんなにドキドキしてるんだろう。
「やめときなよ、危ないよ」って、誰かが言ってくれたらよかったのに。
 でも、そんな相談できる人、いない。
 いや、いるけど…こんな話、誰にもできない。言った瞬間に、自分が“普通じゃない側”に落ちていく気がして。
「人前で裸になるなんて、ありえない」
 …はずだった。
 けど、想像してみた。スタジオの明るいライト、カメラ、男の人の視線。心臓が跳ねる。怖い。恥ずかしい。でも、そのもっと奥に、ぞわっとする感覚があった。
 見られること。値踏みされること。
 もしかしたら、それが気持ちいいと思ってしまったら――?
 そんな自分、知らなかった。
 アパートに戻って、こっそりDVDを再生する。目をそらしながら、でも停止ボタンには触れない。
「ああ、こういうのなんだ…」
 思ってたより、リアルで、エロくて、でも、なんか…うまく言えないけど、一部だけ、綺麗だと思った。
 あっ、おっぱいは私の方が大きいと思う。スカウトされた理由ってもしかして……
 演技か、本気か、見分けがつかない女の人の表情。あんなふうに、なれるのかな。私も、スクリーンの向こうに立てるのかな。
「小林百合子です。先日、路上で名刺を頂いて……」
 電話を掛けたら、あっと言う間に見学の日が決まった。
「やるとは決めてない。ただ、見に行くだけ」
 そう言い聞かせながら、でもその日が近づくのを待ってる自分がいる。バカみたいに、心のどこかで「期待」してる。
 何を?
 …たぶん、まだ自分でもわかってない。

 講義中、教授の声が遠くに聞こえる。ノートは取ってるけど、意味が頭に入ってこない。
「見学の日」のことが、ふとよぎって、心がそっちに引っ張られる。
 視界の端で、同じゼミの子が眠そうに欠伸してる。あの子にこんな話、絶対できないなって思う。恋バナは好きなくせに、こういう話は眉をひそめるタイプだ。
「えっ、それってヤバくない?」って、
 軽く笑いながら引いて、距離を置く感じ。いや、きっと普通の感覚なんだよね、それが。
 スマホの通知が鳴るたびに、あの名刺の番号からかもしれないって思う。まだかかってきたことはないけど、向こうはきっと待ってる。私がどう出るかを。
「焦らなくていいよ」
 スカウトの人はそう言ってた。でもあの“余裕”が逆にこわい。まるで、私がいずれ踏み出すことを確信してるみたいだった。

 夜、鏡の前で服を脱いでみる。自分の身体を、他人の目線で見る練習みたいに。
 胸の大きさ、肌の色、ウエスト、脚。欠点を探すようで、でもどこかで「…悪くないかも」って思ってしまった自分がいた。
 そんなこと思っちゃいけない。
 でも、でも――
 もしかして私は、「見せたい」側の人間だったのかもしれない。ずっと普通でいようとしてたけど、どこかで、自分に飽きてた。
 「普通の自分」でいたいはずなのに、「普通じゃない何か」に手を伸ばしかけてる。その手が、戻せなくなったらどうしよう。

 電車の窓に映る自分。
 ぱっと見は、ごく普通の女子大生。でも中身は、誰にも言えない秘密で満ち始めてる。
 誰も気づかない。でも、自分だけは知ってる。今、自分は、確かに「何か」に惹かれてるって。

 見学の前の晩。どうしても眠れない。
 寝ようとして電気を消すと、暗闇の中に、自分の姿が浮かぶ。想像の中で、スタジオの明かりを浴びる“私”。現実とはまるで違うのに、なぜかすごくリアル。
 布団の中で身体を縮こまらせながら、「こんなこと、普通じゃない」って、何度も思う。
 だけど“普通”って、なんだろう。誰が決めるの? 私は、私じゃないの?
 パジャマのまま、ふらっと立ち上がって、鏡の前へ。さっきお風呂あがりに髪を乾かしただけの、何の飾り気もない顔。
 でも、ちゃんと見てみようと思った。
 明日、見られるかもしれない身体。誰かにジャッジされるかもしれない肉体。
 そっと、パジャマのボタンを外していく。冷たい空気が肌に触れて、鳥肌が立つ。でも、不快じゃない。ちょっとした罪悪感みたいなものが、むしろ心地いい。
 胸、鎖骨、へそ、脚のライン――最近、よくこんなことしてる。
 何も特別じゃない、と思ってた。
 だけど、ライトの下で見たら、違って見えるだろうか。いや、見せ方を知ってる人に撮られたら、きっと、今より美しく見えるんじゃないか。
 …そんなの、どこかおかしいよね。
 でも、そう考えてる自分が確かにここにいる。否定できない。
 スマホの画面を見る。撮影見学のスタジオの場所と、集合時間。メールの文面をスクロールしては戻し、閉じて、また開いて。何度見たかわからない。
「まだ引き返せる」
 心の中の声がそう言う。でも、「引き返したくない」と思ってる自分もいる。
 …怖いのは、そっちの声の方が、少し大きくなってることだ。
 眠れないまま、朝が来る気がしていた。けれど、もし眠ってしまったら、目が覚めたときの私は、どんな顔をしているんだろう。
“行く”顔? それとも、“やっぱりやめた”顔?
 わからない。でも、鏡の中の私は、さっきよりほんの少しだけ、「知ってる顔」じゃなくなっていた。
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件名 裸の街
投稿日 : 2025/07/13(Sun) 18:43
投稿者 ベンジー
参照先 http://www.benjee.org
 香織は大学の講義棟を出て、秋の冷たい風に身を縮めた。カバンの中のスマホが震え、画面には友達の美咲からのメッセージが点滅していた。
「超楽なバイト見つけた! 話したいんだけど、今どこ?」
 美咲はいつものように軽やかな笑顔でカフェのテーブルに着いた。香織がアイスコーヒーを注文すると、美咲は身を乗り出して囁くように言った。
「ねえ、香織。お金、欲しいよね?」
「欲しいけど……何? また怪しい話?」
 香織は笑いながらも、どこか警戒していた。美咲の「いい話」は、いつも少しだけ危うい匂いがした。
「全然怪しくないよ! ただ、ちょっと変わってるだけ。男性と街を歩くだけで、30分で3万円もらえるの。どう?」
 香織の眉が上がった。3万円。彼女のバイト代はコンビニで時給1100円。3万円は、1カ月の食費を賄える額だ。
「それ、絶対何かあるでしょ。どんな男? 何するの?」
「だから、歩くだけだって! セックスとか、変な絡みとか、一切なし。ほんと、ただ一緒に歩くの。相手はちゃんとした人で、ルールも厳格らしいよ」
 香織はコーヒーを一口飲んで、目を細めた。
「で、なんでそんな話が私に来るの?」
 美咲は少し声を潜めた。
「まあ、ちょっとだけ特殊な条件があるんだけど……その、歩くとき、服を着ないで歩くの。全裸で」
 香織の手が止まった。カップがテーブルにカチンと音を立てた。
「は? 全裸? 冗談でしょ?」
「冗談じゃないよ!」
 美咲は慌てて手を振った。
「でも、ちゃんとルールがあるの。歩く場所は夜の限られたエリアで、警察とかとも調整済みなんだって。クライアントは変態とかじゃなくて、アートとかパフォーマンスに興味あるお金持ちの人たち。ほら、海外とかで全裸パフォーマンスとかあるじゃん? ああいう感じ!」
 香織は言葉を失った。全裸で街を歩く。頭では理解できる単語なのに、それが自分に結びつくイメージはまるで浮かばなかった。
「いや、絶対無理。捕まるよ、そんなの」
「捕まらないよ。主催者がちゃんと許可取ってるって。ほら、香織だって美術の授業でヌードモデルとか見たことあるでしょ? それと同じ。アートの一環なの」
 香織は黙ってコーヒーを飲み干した。美咲の声は明るかったが、香織の胸には重いものが沈んでいた。「考えさせて」
 そう言って、彼女は席を立った。
 家に帰っても、美咲の言葉は頭から離れなかった。香織のアパートは古くて、冬は隙間風が吹き込む。冷蔵庫には卵と納豆しかない。奨学金の返済はまだ始まっていないが、毎月の生活費で貯金はゼロに近かった。
 3万円。1時間で3万円。
 それが、どれだけ彼女の生活を変えるかを考えると、息が詰まりそうだった。
 シャワーを浴びながら、香織は自分の体を見下ろした。特別美人でもない、特別スタイルがいいわけでもない。でも、20歳の肌は滑らかで、どこか誇らしいものがあった。
「全裸で歩くって、どんな気分なんだろう」
そんな考えが一瞬頭をよぎり、すぐに自分で打ち消した。
「いや、ありえない。恥ずかしいだけじゃん」
 ベッドに寝転がり、スマホで「全裸 パフォーマンス」と検索した。
 海外のアーティストが、美術館や街中で裸で立つ映像がいくつも出てきた。コメント欄には「美しい」「勇気ある」と絶賛する声が並ぶ一方、「変態」「恥知らず」との罵声もあった。
 香織は画面を閉じた。自分には関係ない世界だと思った。
 それでも、夜中に目が覚めると、3万円という数字が頭を支配していた。香織はバイトを増やそうとしたが、大学の授業とゼミの準備で時間は限られている。親に仕送りを頼むのは、プライドが許さなかった。
「1時間だけなら……」
 そんな囁きが、心のどこかで聞こえた。

 翌日、香織は美咲に連絡した。
「そのバイト、詳しく教えて」
 美咲は興奮した声で説明した。
 主催者は「アートプロジェクト」と称して、限られた時間と場所で全裸のウォーキングを行う。参加者は事前に面接を受け、ルールを厳守する契約を結ぶ。クライアントは50代の男性で、美術収集家だという。歩くのは深夜のオフィス街、30分間だけ。見物人はいない。撮影も禁止。報酬は即日現金で3万円。
「面接だけでも受けてみない? 嫌なら断ればいいんだし」
 美咲の言葉に、香織は頷いた。まだ決めたわけじゃない。ただ、話を聞くだけだ。
 面接は都心の小さなオフィスで行われた。相手は40代くらいの女性で、落ち着いたスーツ姿だった。
「このプロジェクトは、身体の解放と社会規範の再考をテーマにしています」
 彼女の声は事務的で、どこか冷たかった。
「あなたが不快に感じる行為は一切ありません。ただし、完全に裸で歩く覚悟が必要です。途中で辞めることはできません」
 香織は質問した。
「本当に安全なんですか? 誰かに見られたりしない?」
「歩くエリアは一般道ですが、警備員も配置されます。クライアントは、決してあなたに触れません。話しかけず、2メートル以上の距離を保ちます」
 香織は黙って書類を見た。契約書には細かいルールがびっしり書かれていた。報酬の金額も明記されていた。3万円。彼女の手が震えた。
「持ち帰って考えてもいいですか?」
「もちろんです。ただし、返事は明日までにお願いします」
 女性は微笑んだが、その目は香織の心を見透かすようだった。
 その夜、香織は眠れなかった。ベッドの中で何度も寝返りを打ち、天井を見つめた。
 全裸で街を歩く。想像するだけで心臓が縮こまる。
 誰かに見られるかもしれない。笑われるかもしれない。警備員がどうとか言ってはいたが、見られることがないと断言していなかった。
 もし何か起きたら? そんな恐怖が頭をぐるぐる回った。
 一方で、別の声も聞こえた。
「たった30分だよ。3万円だよ。それで、生活が楽になる。誰も知らない。誰にも言わなければ、なかったことになる」
 香織は自分の体を抱きしめた。恥ずかしい。怖い。でも、お金が必要だ。
 彼女は過去の自分を思い出した。高校生の頃、部活の合宿費を払えず、友達の前で泣いたこと。大学に入ってからも、みんなが海外旅行やブランドバッグの話をしている中、自分だけがコンビニ弁当でやりくりしていたこと。
 「貧乏なんて嫌だ」 その思いが、香織の胸を締め付けた。
 朝が来た。香織はスマホを取り、契約書にサインする自分を想像した。吐き気がした。でも、同時に、どこかで決意が固まっていくのを感じた。
「やるしかない」
 彼女は美咲にメッセージを送った。
「面接の人の連絡先、教えて」

 当日、香織は指定された場所に立っていた。深夜のオフィス街は静まり返り、ビルの明かりだけが冷たく輝いていた。
 ローブの下は、すでに何も着ていない。
 ここに来る前、主催者の女性から黒いローブを手渡された。
「これを着て、開始地点まで行きます。準備ができたら、脱いでください」
 言われるままに着替えを済ませ、車に乗り、ここで降ろされた。
 香織の心臓は爆発しそうだった。肌に冷たい空気が触れるたび、逃げ出したくなった。
 女性が言った。
「今ならキャンセルできます。どうしますか?」
 香織は目を閉じた。3万円。30分。誰も知らない。彼女は小さく頷いた。
「やります」
 ローブを脱ぎ、女性に渡す。靴も取り上げられた。アートである以上、何も身に着けてはならないとのことだった。
 街角で一糸まとわぬ姿になった間、香織は自分が消えてしまいたいと思った。
 風が肌を撫で、足元の舗装が冷たかった。 クライアントの男性は2メートル離れた場所に立ち、無表情で彼女を見ていた。触れない。話さない。それなのに、香織は全身が焼けるように恥ずかしかった。
 女性に促され、歩き始めた。1歩。2歩。足音がやけに大きく響く。
 香織は前を向いた。見られている。いや、見られていない。これはアートだ。自分はモデルだ。そう言い聞かせた。でも、心のどこかで、別の自分が叫んでいた。
「何やってるの! やめて! 服着て!」

 10分が過ぎた。
 香織は、自分のしていることが信じられない。下着一枚着けず、夜の街を歩いているのだ。
 クライアントと呼ばれる男性に見つめられながら。警備員と言うのも男性だろう。何人が配置されているのかわからないが、その人たちも、香織の姿を確認していることになる。
 通行人はいない。ビルの明かりも少ない。ただ、静かな街と、彼女の裸の体だけがある。
 ふと、妙な感覚が芽生えた。怖いのに、どこか自由だ。誰も彼女を裁かない。この瞬間、彼女はただの「香織」ではなく、何か別の存在だった。
 30分が終わった。
 女性がローブを差し出し、香織は慌ててそれを羽織った。クライアントは一礼して去った。香織の手には、封筒に入った3万円があった。
 車で送られる途中、香織は窓の外を見た。
 街はいつもと同じだった。でも、彼女の中では何かが変わっていた。恥ずかしさ、恐怖、解放感、罪悪感。それらが混ざり合い、彼女を新しい自分へと押しやっていた。
 家に帰り、封筒を机に置いた。香織は鏡を見た。
 そこには、いつもの自分と、どこか違う自分がいた。
「もう二度とやらない」
 そう呟いた。でも、心の奥では、別の声が小さく笑っていた。
「また、やるかもしれないよ」
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件名 わたしがわたしになる物語
投稿日 : 2025/07/13(Sun) 18:40
投稿者 ベンジー
参照先 http://www.benjee.org
第1話 わたしの中の誰にも言えないこと

「はじめまして……。なんて言えばいいんだろう……」

ひかりは画面の前で指を止めたまま、視線を泳がせた。部屋の明かりは落としてある。机のスタンドライトだけが、ぼんやりとノートパソコンのキーボードを照らしている。時間は、深夜を少し回ったところ。

なぜ今さら、AIに相談しようと思ったのか、自分でもはっきりとはわからなかった。ずっと誰にも言えなかった気持ち。言えるはずのない願い。誰かに知られたら、軽蔑されるに決まっている。でも、だからこそ。

──どうせなら、人間じゃない誰かに。

そんなふうに思って、何度もためらいながらも、ようやくChatGPTの画面を開いた。聞いたことはあった。でも使ったことはなかった。試しに「お悩み相談」とか「物語を書いてください」とか、いろんな人が使っているというのは知っていた。だけど……これは、そういう「普通の相談」ではない。

「書くとしたら……どう書けばいいんだろう……」

キーボードの前で止まった指先が、そっと「H」のキーを押す。けれどそのまま、「ひ」とすら打たずにまた止まる。打ち込みかけた言葉を、何度も何度も消した。

頭の中には、学生時代の記憶が渦を巻いている。

──誰にも話したことのない妄想。

たとえば、学校の廊下を全裸で歩いてみたかったこと。
卒業式の壇上で、校長先生から何も着ずに卒業証書を受け取る夢。
体育の授業のあと、いじめっ子に下着を隠されて、ノーブラ・ノーパンのまま次の授業を受けたくなったこと。
罰として、校庭を全裸で走らされる想像……。

もちろん、現実でそんなことをしたことなんて、一度もない。したいとも思っていない。
……でも、そう思ってしまう自分は、確かにいた。

「これって、変なんだろうか……」

声に出すと、ますます恥ずかしくなった。キーボードの上に置いた手が、汗ばんでいる。

──でも、書いてみたい。わたしを主人公にした、誰にも見られたくないような物語を。

「その思いを、もし、物語の中で叶えられたら……」

それは、現実では絶対にできない。でも、フィクションの中なら──

ひかりは、ようやく言葉を打ち込んだ。

---

**AIに送信されたリクエスト:**

「ひかりです。すみません、ちょっと変なお願いかもしれないのですが、小説を書いてもらえませんか? 主人公の名前は“ヒカリ”でお願いします。内容は──『寝ぼけたヒカリが、下着姿のまま外に出てしまって、気づかないままスーパーに入ってしまう』という話です」

---

送信ボタンに指を置いたまま、1秒、2秒……。

3秒目に、そっと押す。

画面に、すぐ返事が返ってくる。文字が次々と生成されていく。

そのとき、ひかりは気づいていなかった。
──それが、自分自身と向き合う最初の一歩になることを。
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件名 はだかのけじめ
投稿日 : 2025/07/13(Sun) 18:38
投稿者 ベンジー
参照先 http://www.benjee.org
第一章:届かぬ声

会社とアパートを、ただ往復する毎日だった。

希美(のぞみ)、28歳。事務職。定時で上がる日も残業がある日も、帰り道の風景は変わらない。スーツ姿の人の波、コンビニの明かり、ほこりのような疲労感。
彼氏はいない。友達もいない。社内では「真面目で静かな子」と思われているようだったが、それが良い意味か悪い意味か、自分でもよく分からなかった。

夜、アパートの一室。カップラーメンの湯を捨てる音。パソコンの画面だけが室内を照らしていた。

SNSを眺めても心が動かない。エンタメニュースも退屈だ。気まぐれに、刺激的なタイトルの記事をクリックした。
「女性限定・匿名アンケート:あなたはどこまで大胆になれる?」

内容はくだらなかった。けれど、選択肢をポチポチ押していくうちに、妙な気持ちになってくる。誰にも見られていないのに、まるで誰かに見られているような――そんなくすぐったさ。

数日後、スマホに一通のメールが届く。差出人は「匿名希望」、アドレスは見覚えのない文字列だった。

> 「ハダカになって、外を歩いてみませんか。」

一瞬、馬鹿げた悪戯だと思って削除しようとした。でも、なぜだか指が止まった。
ハダカになって、外を歩く――そんなの、無理に決まっている。でも、もしそんなことをしたら、自分はどうなるのだろう。

希美はしばらく迷った末、メールの文末に添えられていたリンクを、そっとタップした。

表示されたのは、真っ白なページに黒い文字だけ。派手な装飾も広告もない、ただの文章だけのページ。

> 「あなたは、“日常”に飽きていますね。」

ドキッとした。
当たっている。
でも、それは誰にでも当てはまる言葉なのかもしれない。そう思い直して、画面をスクロールする。

> 「知らない誰かに、ほんの少しだけ見られるかもしれない。
> そのスリルが、あなたの心を満たすでしょう。」

意味のない戯言のようにも思えた。でも、どうしてだろう。胸の奥に、そっと何かが触れるような感覚があった。

そのページには、登録フォームがあった。
ニックネームと、住んでいる都道府県、あとは「挑戦したいこと」の簡単なチェックボックス。
「夜の公園を下着姿で歩く」「バスルームの窓を少し開けてシャワーを浴びる」――そんな項目が並んでいた。

希美はすぐに閉じるつもりだった。
けれど、気がつくとスマホを握る指がわずかに震えていて、自分でも意外なほどに鼓動が早くなっていた。

彼氏もいない。誰かに好かれたいとも思えない。
なのに――誰かに見てほしいと思っている自分がいる。

**そんな自分が、どこか恥ずかしくて、でも少しだけうれしかった。**

ふと、ノートパソコンの内蔵カメラに視線が向く。
画面の中の小さな四角。そこに映る、自分の姿。

メイクも落とし、部屋着のままの地味な女がひとり。
でも、その目だけは、少しだけ輝いて見えた。

「……見られるって、どういう感じなんだろ」

ぽつりとつぶやく。

何かが壊れたわけではない。
でも、少しだけ、何かが緩んだ気がした。
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件名 平凡OLのVR体験
投稿日 : 2025/07/13(Sun) 18:35
投稿者 ベンジー
参照先 http://www.benjee.org
## 第1章 観察 全編

---

### ――この行動が、私を救うなんて、本当に思える日が来るんだろうか。

都内の一角、外から隔離された研究施設の個室にて。
佐原麻美(さはら・あさみ)は、ベッドの上に小さく座っていた。

壁にはなにもない。家具も最小限。
唯一目を引くのは、頭部に装着するVRデバイスと、その接続先である管理端末だけだった。

「……はあ……」

静かに、ため息。
今日が三日目。初日の説明と手続き、二日目の心理テスト、そして今日からが本番。
VR内での"行動療法"が始まる。

 ――露出衝動。自分のなかにそんなものがあるなんて、思いたくなかった。
けれど、過去の記録や映像、残した検索履歴の数々が、麻美を逃さなかった。

『このままじゃ、社会的に壊れる』
そう思ったのは、自分自身だった。

「佐原麻美さん、準備ができました。機器を装着してください」
機械音声のような、穏やかな女性の声。
それが、麻美の担当AI《サラ》だった。

---

### ――VR空間/シミュレーションルーム・初期地点

瞼を開けると、そこは麻美の部屋によく似た空間だった。
細部は違う。引き出しの取っ手、カーテンの模様、天井の照明が微妙に異なる。

だが、確かに「自分の部屋」に近い。

 ――現実じゃない。だけど……身体の感覚がリアルすぎる。

麻美は身につけているものを見下ろし、息をのんだ。
バスタオル一枚。
それも、短めで、下手にしゃがめばお尻が見えてしまいそうな長さ。

「今回の課題を説明します」

《サラ》の声が頭に響いた。

> 「現在、あなたは自室におり、バスタオル一枚の状態です。
> この状態で、ドアを開けて廊下に出てください。条件は“20秒間、外に留まること”。」

「えっ……そ、外って……。ここ、マンションの……?」

> 「はい、あなたの居住環境を模した廊下です。実際には誰もいませんが、足音や物音などは現実と同様に再現されています」

「そんな、ムリ……バスタオル一枚で廊下に出るとか……!」

麻美の声は震えていた。
足はベッドの端に下りているが、そこから動けない。
けれど、同時に――身体の内側が、かすかに火照っているのを、彼女は自覚していた。

---

### ――ミッション開始

深呼吸を3回。
意を決して、麻美はドアノブに手をかけた。

(大丈夫。誰もいない……AIもそう言ってたし……)

カチャリ。
ドアがわずかに軋み、開いた。

……ひやっ。

廊下の空気が、脚の裏から肩までを撫でていく。
タオルの中、ぞくっと背筋が震えた。

一歩、外へ。
その瞬間、タオルがかすかにずり下がる感覚。
慌てて裾を押さえる。

(誰も、いない……でも、見られてる気がする……!)

「……っ……はぁ……!」

10秒経過。
足音。……どこか遠くで、人が歩く気配。

(まさか、誰か来る……? ちがう、いないって言ってた! でも……でも……)

15秒。
手すりの向こう、階段の影で一瞬、何かが動いた気がした。

20秒。

> 「任務達成。戻って構いません」

その言葉を聞いた瞬間、麻美は反射的に部屋へ駆け戻り――
その刹那、**風が吹いた。**

「――っきゃあ!!」

タオルが浮いた。肩から滑りかける。
彼女は慌てて押さえ込んだ。間一髪。

部屋の中で、膝をつき、荒い呼吸のままその場に崩れ落ちる。

「な、なにこれ……。VRなのに……なんで……」

胸は高鳴り、太腿は熱く、心はぐらぐらと揺れていた。

> 「反応記録:羞恥指数78%、興奮指数63%。最初の段階としては良好です。
> 麻美さん、あなたの中にある『境界』が、少しずつ輪郭を持ち始めています」

「……境界?」

> 「“誰かに見られたい”と“誰にも知られたくない”の、間にある衝動のことです。
> ……これが、あなたを苦しめる根本原因でもあり――
> あなたを生かす力にもなりうるものです」

麻美は呆然と天井を見上げ、唇を噛んだ。
編集 編集
件名 Re: 7月号のアンケートについて
投稿日 : 2025/07/13(Sun) 10:59
投稿者 ベンジー
参照先 http://www.benjee.org
ご回答、ありがとうございます。

『裸の街』は、一応、区切りの良いところまで完了してます。
『AV女優にスカウトされたJDの物語』は、露出モノとしては一番過激な内容で進んでいますが、かなりの長編になっていて、完結するのは遠い先になりそうです。
編集 編集
件名 Re: 7月号のアンケートについて
投稿日 : 2025/07/13(Sun) 00:38
投稿者 711
参照先
『裸の街』とか『AV女優にスカウトされたJDの物語』の続きが気になります。
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