露出小説お姉ちゃんのキッス 作;ベンジー 第四章 ハダカで縛るの?(後編) 4 前の晩、徹夜でオナニーに耽っていた由衣は、本当に具合が悪かった。 夕飯の用意をするまでは何とか保たせたが、部屋に戻ると一気に疲れが出た。悠人に断り、先にお風呂に入って、ベッドに入ると、睡魔に引きずり込まれた。 悠人が気にするかもしれないと気づいたのは、朝になってからだ。 (大丈夫だったかしら) 悠人を起こしに行く時間になり、部屋のドアをノックしたが、返事がない。どうしたのだろうとドアノブに手を掛けた由衣だが、先日の出来事を思い出し、手が止まる。 「悠人、起きて。悠人」 ドアの外から、何度も声を掛ける由衣。 いくら呼んでも、全く反応がない。悠人に何かあったのかもしれないと、由衣は意を決して部屋に踏み込んだ。 ベッドに行儀良く、仰向けで寝ていた悠人だが、相変わらずピクリとも反応しない。 「悠人。どうしたの。起きて、悠人」 心配になった由衣が、身体を大きく揺する。掛け布団を剥いで、パジャマ姿の悠人に、縋り付く。 「う……うん」 悠人が寝返りを打ち、掛け布団を引っ張って、由衣に背を向けた。 「悠人!」 追いかけるようにベッドに上がる由衣。悠人の布団に潜り込むような形になった。 「お姉ちゃん……?」 悠人が、顔を上げた。 「大丈夫? どこか痛くない?」 「何? もう朝……」 悠人は、まだ寝ぼけているようだ。目がまともに開いていなかった。 「何とも、ないの?」 「うん、平気だよ。夕べちょっと寝れなくて……」 「良かった。起こしても返事がないから、お姉ちゃん、心配したんだから」 由衣は、涙目になっていた。 悠人は何でもなさそうだ。ホッとした由衣は、悠人の背中に抱きつく。悠人は、じっとされるがままにしていた。 由衣は、ふと思い当たった。 悠人が夕べ眠れなかったのは、一緒にお風呂に入らなかったせいかもしれない。 いや、きっとそうに違いないと思った由衣は、 「今夜はお風呂、一緒に入ろうね」 怖々、言ってみる。今度は悠人が泣き出した。 「良かった……」 「えっ、悠人。何て言ったの?」 悠人は、涙を拭いながら答えた。 「お姉ちゃんに嫌われたのかと思って、落ち込んでいたんだ。もうお風呂にも入ってくれないし、一緒に寝てもくれないって……」 今もまだ、肩を震わせている悠人。 由衣は、夕べ、寝不足で具合が悪かっただけではない。悠人を避けていた。もちろん嫌いになったわけではないが、瑞穂に「縛り」の話などされたものだから、意識しないわけにはいかなかった。 もし何か刺激があれば、またオナニーが止まらなくなってしまう。それか怖くて、お風呂にも入れなかったのだ。 「ゴメンね、悠人。悲しい思いをさせちゃったね」 由衣は、悠人の背中を、もう一度力強く抱き締めた。 その日は、二人、仲良く登校した。 知らない人が見たら、仲睦まじいカップルに見えたことだろう。いつもなら周囲を気にする由衣も、はしゃぎ回る悠人に合わせていた。 やってみると、意外に楽しかった。 「相変わらず、仲がいいのね。羨ましいわ」 校門で会った瑞穂の第一声だった。 「やだ、もう。そんな言い方しないで」 由衣は、はにかんで見せる。悠人も照れていた。これでは本当に恋人同士のようだ。 昇降口まで来ると、一輝が追いかけて来た。一年生の悠人と二年生の由衣では教室が違う。「じゃあね」と別れた後で、瑞穂が話し掛けて来た。 「昨日の内に頼んでおいたから、今夜には届くわよ」 「えっ、何のこと?」 「ひどい。忘れちゃったの」と睨み付ける瑞穂。「家に帰ったら、思い出すわよ」と、由衣の肩を叩いた。 すぐに思い出した由衣だが、学校の廊下で、口に出せるものではなかった。 (本当に頼んじゃったんだ。そんなものが届いたらどうしよう) 由衣には、何も決心が付いていなかった。 「あら、まだ迷っているの」 瑞穂には筒抜けのようだ。 「だってぇ、そんなこと……。私と悠人は姉弟なんだよ」 「だから、安心して任せられるんじゃない」 瑞穂は、大人が子供をたしなめるように、言ってくれた。そんなものだろうかとも思わないではないが、由衣はもう一つ納得がいかなかった。 「それに……」 瑞穂の顔が、急に悪戯っ子に変わった。 「悠人君も望んでいるかもよ」 学校が終わると、由衣は急いで家に帰った。悠人より先に着いて、宅配便を受け取りたかった。中身は綿ロープだと、瑞穂は言っていた。そんなものを悠人に見つかるわけにはいかない。 ――悠人君も望んでいるかもよ 瑞穂は、本気でそう思っているかしら。悠人が私を縛りたいと思っているって。 由衣は首を大きく振った。 (そんなわけない。悠人はまだ子供だもの) 一緒にお風呂に入りたがるのも、子供がお母さんと入るのと同じなのだ。おちんちんを洗わせたりするのも、その延長に過ぎないと、由衣は考えていた。 「ただいま」 玄関で声を出してみる。由衣が鍵を開けて入ったのだから、誰もいるわけがない。下駄箱の上に何か載っているということもなく、不在伝票も入っていなかった。 宅配便が届いたのは、夕飯の支度で、由衣が手を離せないタイミングだった。 悠人が受け取ってリビングに持って来た。物が物だけに、中身がわからないように梱包されていた。 「これなあに」と尋ねる悠人に、由衣は「うん、ちょっと」とだけ答えたが、内心はヒヤヒヤものだった。 夕食の時間になり、食卓に差し向かえで座る。 悠人は機嫌が良いようだ。 瑞穂がいうように、悠人が由衣を縛りたいと望んでいるなら、綿ロープを購入した由衣をどう思うだろう。 もしかしたら、中身に気づいているのかしら。 「ねえ、悠人……」 声を掛けてしまってから、由衣は慌てて口を押さえた。 (私ったら、何を訊こうとしているのかしら) 「なあに、お姉ちゃん」 そんな由衣の気持ちに、悠人が気づくはずもなく、無邪気な笑みを浮かべている。 「ううん、何でもないの」 由衣は、両手を食卓の上に伸ばして掌を開き、大きく振って見せた。 「変なの」と言いながら、箸を進める悠人。「お姉ちゃんのこと、縛りたいの」なんて、訊けるわけがなかった。 夕食が済んで、後かたづけが終っても、悠人は「お風呂に入ろう」とは言い出さない。リビングで、二人並んでテレビを見ていた。 由衣から言い出すのを待っているのだろうか。 「お風呂、どうするの?」 由衣は、痺れを切らして訊いてみた。 「うん、今夜は寝る前に入るんだ。お姉ちゃんもそうしてよ」 「ええ。いいけど……」 何か理由があるみたいだ。由衣にも関係があるのだろうか。 悠人の前でハダカになるのは、まだ恥ずかしい。おちんちんを洗うのも、緊張する。由衣の身体にも火を付ける。オナニーがしたくて堪らなくなるのだ。 今夜もそうなったら、悠人に手を縛って貰うしかないのかしら。 由衣は、まだ梱包をほどいていない宅配便の荷物を思い出した。さっき、自分の部屋に置いてきたままになっていた。 悠人は、まだお風呂に入りそうもない。由衣は一度、部屋に戻った。 安っぽい再生紙の箱を手に取る。瑞穂が頼んでくれた物だろう。由衣は、今の内に、中身を確認しておこうと思った。 胸がドキドキしていた。 ハサミを使わなくても、簡単に開けられるようになっていた。予想していた通り、中身は赤い綿ロープだ。二束、入っていた。 何メートルくらいあるのだろう。取り出してみると、思っていたより重かったが、肌触りは柔らかい。 これなら、縛られても痛くないかも…… 由衣は、このロープで縛られた自分の姿を想像して、頬が熱くなった。 「お姉ちゃん、お風呂に入ろう」 悠人の声が、部屋のすぐ外で聞こえた。今にもドアを開けそうな勢いだった。 「すぐに行くわ」 今、この部屋に入られるのはマズイ。 由衣は咄嗟に立ち上がり、部屋から飛び出した。 ドアの向こうに悠人がいた。後一瞬遅れていたら、綿ロープを手にしているところを、見られていたかもしれない。 5 悠人は、先にハダカになって浴室に入り、由衣が来るのを待っていた。 時間は十時を過ぎていた。いつもは、もう少し早く入るのだが、悠人がこの時間を選んだのにはわけがあった。 曇りガラスの向こうで、由衣が服を脱いでいる。最も期待が膨らむ瞬間だった。 ドアが開く音がした。悠人は身体を捻り、由衣を見て微笑む。 何度お風呂に入っても、変わらない恥じらいを見せる由衣。ハンドタオルで前を隠し、躊躇いながらもバスマットに膝を付く仕草が、悠人には堪らない。 いつの間にか、身体を洗って貰う手順が、できていた。 由衣の手の中で膨らむおちんちんが、いつにも増して、パンパンに張りつめていた。今日の本番は、お風呂を出てからだ。 問題は、悠人がちゃんと言い出せるか、だった。 それにしても、狭い湯船に、二人並んで浸かる安心感は何だろう。 この時だけは、エッチな気持ちも忘れて、気持ちが和む。これで手足が伸ばせるような大きなお風呂だったらと、思ったりもした。 由衣の肩に頭を載せて甘える悠人。 幼かった頃を思い出す。母親のいない日が多い分、由衣が何でもしてくれた。悠人にとって、由衣はお母さん代わりでもあったのだ。 お風呂から出た後、悠人は「身体を拭いて欲しい」と言ってみた。由衣は「甘えん坊なんだからあ」と、おでこを小突いた手で、バスタオルを握った。 脱衣所で、丸裸のまま棒立ちの悠人を、由衣が濡れたままの身体で拭いてくれた。おちんちんは、まだビンビンに張り詰めていた。 由衣が、悠人のおちんちんの様子に、目を留めていた。 「お姉ちゃんにお願いがあるんだ」 悠人の言葉に、由衣は、勘違いをしたのかもしれない。この場でフェラチオして欲しいと思ったわけではないのだが、 「ちょっと待ってね」 由衣は、自分の身体を大雑把に拭くと、バスタオルを胸から下に巻き付けて、悠人の足元に膝を付いた。 右手を悠人のおちんちんに添え、腰を浮かして目の高さに合わせた。 前回の快感が脳裏に甦る。由衣の薄い唇に悠人の膨張した肉塊が収まるのだ。誘惑に負けそうだが、今ここでくわえて貰うわけにはいかない。 悠人は腰を引き、両手でおちんちんを隠した。 「お姉ちゃん、違うんだ」 由衣が不思議そうな顔で悠人を見上げた。 「今日はベッドでして欲しいんだ」 悠人は、胸の奥から吐き出すように、口走った。 本当は、ベッドでフェラチオをして欲しかったわけではない。一緒に寝て欲しかっただけなのだが、正直な気持ちは言い出せない。 まして、由衣を縛りたいとは、とんでもない話だ。 今日のところは、由衣をハダカのまま、ベッドまで連れて行きたかった。 「ねえ、いいでしょう」 悠人は服を着ようともせず、子供のようにダダをこねて見せた。 ずるいとは思ったが、こうした仕草に、由衣は弱いはずだ。悠人の思惑通り「いいわよ」と口にする由衣。 今がチャンスだ。 「わーい。それじゃあ、すぐに行こう」 悠人は、由衣の手を引いて立たせると、そのまま廊下へと出て行く。 「ちょっと待って」 悠人は止まろうとしなかった。 由衣に着替える時間を与えるわけにはいかない。悠人は腰にタオルも巻かず、生まれたままの姿で由衣の手を曳き、階段を上がっていく。 「お姉ちゃんの部屋でいいよね」 由衣の部屋に飛び込んだ全裸の悠人と、バスタオル一枚の由衣。 二人の前に、赤い綿ロープが散らばっていた。 悠人は、股間の肉塊に血液が凝縮されていくのを感じた。 床にある物は、ネットで見たSM用の綿ロープだ。大勢の女の子たちが、あのロープで縛られ、あられもない姿態を晒していた。 さっき届いた宅配便の箱が、開けられていた。由衣が、ロープを注文したに違いない。 頭の中が、ものすごい勢いで回転していく。 悠人は、あわよくば、由衣を縛りたいと思っていた。 それを感じ取った由衣が、あの赤い綿ロープを注文した。つまり…… (お姉ちゃんは、縛られても良いと思っているんだ) 悠人が結論を出すのに、たいした時間は掛からなかった。 なぜ由衣が悠人の気持ちに気づいたのか、とか、いつの間に注文を出したのか、とか、そんなことは、どうでも良かった。 悠人は、ただ、嬉しかった。 「お姉ちゃんには、何でもわかっちゃうんだね」 悠人は、綿ロープを拾い上げると、振り向いて由衣を見上げた。 6 この状況を、どう言い訳したら良いのだろう。由衣は、頭が真っ白になった。 悠人のまなざしだけが、ギラギラと輝いていた。 「そ、それは瑞穂が……」 勝手に注文したの、と言おうとしたが、途中で止めた。 それよりも逃げたほうが良いかもしれない。 悠人は、手にしたロープを何に使うつもりなのか。もし悠人が、SM用ロープの使い方を知っているとしたら、由衣は、悠人に縛られてしまう。 後ずさりしそうになる由衣の手首を、悠人が掴んだ。 「何をするの?」 由衣は、逃げるタイミングを失った。 悠人に曳かれるまま、部屋の真ん中に正座する形となった。悠人が、後ろ手でドアを閉める。自分の部屋だと言うのに、由衣は、監禁されたような気分だ。 「縛らせてくれるんでしょ。お姉ちゃんは、俺が、お姉ちゃんを縛りたいって思っていたの、わかっていたんでしょ」 悠人は何も隠そうとしない。 SMに、男が女をハダカにして縛る習慣があることは、知っていた。 瑞穂から「縛って貰えばいいのよ」と言われた時も脳裏を掠めたが、単にオナニーを防止するための手段としてであって、男女の変態的な行為ではない。 (縛られちゃったら、どうなるのかしら) 由衣の頭の中に、ふと、そんな疑問が生まれた。 期待と言ったほうが良いかもしれない。怖くて逃げ出したいのに、一方では縛られてみたいと思っているのか。 「ねえ、いいでしょ」 悠人が、迫って来た。 由衣は、胸元でバスタオルの合わせ目をしっかりと押さえる。「そんなのダメよ」と拒む由衣。でも、その意志は、足にまでは伝わらない。 迷いが、由衣の行動を遅らせた。 「お姉ちゃん、手を後ろに回してよ」 悠人は、綿ロープの端を持ち、ロープの真ん中から二つ折りしていた。 「ホントに、縛るの?」 由衣の言葉には、祈りと迷いの両方が込められていたのだが、悠人には、まるで伝わっていないようだ。大きく「うん」と頷いて見せた。 (やっぱりダメ!) 頭の中で、そう叫んだ由衣だが、両手は胸元のバスタオルを離れていた。 ゆっくりとした動作で、両手は背中へと向かう。途中で何度も躊躇いを見せながら、背中の真ん中で手首が重なる。 (どうしよう。縛られるなんてイヤなのに) まるで、催眠術にでも掛けられているようだった。由衣の意識とは無関係に、両手は悠人の持つ綿ロープを受け入れようとしている。 悠人が、由衣の手首を掴んだ。 「あっ!」 思わず、声が震えた。 「お姉ちゃん、怖いの?」 悠人が、控えめな声で訊いて来た。「うん」と首を縦に振ったのは、頭の中だけだった。 口に出た言葉は、 「いいの。悠人の好きにして」 (私ったら、なんでそんなことを……) 後悔は、何も待ってくれなかった。 由衣の手首に、綿ロープが巻き付いていくのを感じた。 一巻き、二巻き。 手間取っているようだが、悠人は、軽く絞った後、ロープを結び出した。手首に圧迫感はあるが、痛いというほとではない。 縄留めができたらしい。由衣の両手が、動かなくなった。 (縛られちゃった。もう、何をされても抵抗できない……) 由衣は、自分の身が頼りなく思えた。手が使えなくなっただけで、こんなにも不安になるとは思ってもみなかった。 悠人は、由衣をどうするつもりなのだろう。 考えている余裕もなかった。悠人が、由衣の正面に回り込んだ。 「バスタオル、取ってもいいよね」 遠慮がちではあったが、悠人の問いには、逆らい難いものを感じた。どのみち、悠人がその気なら、避けられるものではない。 思った通りだった。 由衣が返事をできずにいる内に、悠人の手が、バスタオルの胸元に掛かった。 「えっ、全部……」 見られちゃうの、と由衣は身震いした。 一緒にお風呂に入り、悠人には何度もハダカを見られていたが、お風呂以外の場所で、しかも、両手の自由を奪われた状態で、ハダカにされるのは、恥ずかしさのレベルが桁違いだ。 「勘弁して」と思っても、声にはならない。 悠人は、由衣の肌に触れないようにしているのか、指先の動きが辿々しい。額に大粒の汗を浮かべていた。 悠人の手により、バスタオルは、一枚の布になって床に落ちた。 抗う術もなく、丸裸にされてしまった由衣。 悠人の視線から、胸の膨らみを隠すこともできない。身体を前に倒し、太ももに力を入れて、少しでも羞恥部分の露出を少なくするのが、精一杯だった。 「お姉ちゃん、いいよ。すごくいい」 何を感激しているのだろう。 由衣は、顔を上げることもできない。どんな目で由衣を見ているのか。悠人の表情を見るのも怖かった。 「手首を、もっと上にしてよ」 悠人は、由衣の背後に戻ると、手首を縛ったロープを持ち上げた。 「高手小手縛りって、言うんだって」 由衣には、もちろん何のことだかわからない。それでも、悠人が手首の位置を首に近づけようとしているのはわかった。 二の腕が後ろに引っ張られ、由衣は胸を張らなければならない。 悠人が背後から、由衣の胸の膨らみに、手を伸ばした。 おっぱいを揉まれるのだと思って、由衣は身体を強張らせたが、悠人の手にはロープに握られていた。 手首を縛ったロープの余りを、二の腕から胸へと回して来たのだ。 「えっ、何?」 声に出ていた。が、悠人の手は止まらない。 ロープはおっぱいの下側を這い、背中に戻って引き絞られた。由衣にとっては、予想だにしない状況だ。縛られると言っても、手首をちょっと背中で、くらいにしか考えていなかった。 まさか悠人が、こんなことをするなんて。 由衣が戸惑っている内にも、ロープは二週目に入った。今度は、おっぱいの上側を通り、背中に戻る。ギュッと絞られて、由衣は胸が苦しくなった。 縄留めに入ったのだろう。悠人は、由衣の背中でごそごそと動いていた。 「あれぇ、変だなあ」 どうも、うまくいかないらしい。 ややしばらく悪戦苦闘を続けていたが、胸に回されたロープは緩んだままだ。 由衣は、心配になってきた。 「どうしたの、悠人」 背中に向かって、声を掛けてみる。 「うまく結べないんだ」 悠人は、半分、泣き声になっていた。 胸に回したロープを引き絞って縄留めをしたいのだが、縛ろうとするとロープが緩んでしまい、だらしなくなってしまうらしい。 「あーん、まただあ」 悠人が女の子を縛るのは初めてだろう。うまくいかなくても不思議はない。 以前にも同じようなことがあった。雑誌の付録のオモチャが、どうしてもうまく組み立てられなくて、泣きべそをかいていた悠人。 由衣が手伝って完成させると、これ以上ないほど喜んだ。 「悠人、頑張って。ほら、もう一度、やってごらん」 今の由衣に、悠人を手伝ってあげることはできない。応援するのがせいぜいだ。 「うん、わかった」 一度ほどいたロープを、悠人がまた胸に回した。 おっぱいの下側を通して背中に戻る。ここまでは順調なのだが、二巻き目を終えた辺りから怪しくなり、いざ、縄留めとなった時には、下側のロープが緩んでいた。 「やっぱりダメだよ」 悠人がロープを投げ出した。由衣が振り向くと、悠人は涙を擦っていた。 由衣は、昔のままの悠人が、いじらしく思えた。 「そんなことないわ。そうだ。今度は一巻き目で、どこかに引っかけてみたら」 「どこにだよ」 悠人の涙声は変わらない。由衣は考えた。 「ほら、ここよ」 由衣は、縛られた手首を動かす。 「わかるよね? ここの結び目のところに引っかけられるでしょ」 「あっ、本当だ」 悠人の声に、少しだけ明るさが戻った。 三度目のロープが胸に掛けられた。背中の回したところで、由衣の手首を縛っているロープの結び目の下に、胸から回したロープを通す。 相変わらず、辿々しい感じだが、悠人は無言でやっていた。 「そうよ。全部、通し終ったら、一度ロープを引っ張って」 「うん、わかった」 悠人が力を込めたのだろう。由衣の胸が締まる。 「ううっ」 思わず声が漏れた。 「大丈夫? きつかったかな」 「いいの。気にしないで。それより、次は反対側から回すのよ」 悠人は、言われた通りにロープを引き絞ったまま、さっきと逆回りで胸に回した。今度はおっぱいの上側を通す。二の腕にも二カ所にロープが掛った。 ロープが背中に戻ると、悠人の手が止まった。 「さっきのように、もう一度、ローブを絡めるのよ」 悠人は、もうすっかり由衣を頼りにしているようだ。由衣は、自分で自分を縛る手伝いをしていることになる。 「通したよ」 「えっ、うん。そしたら、もう一度ロープを引っ張るの」 「わかった」 ロープが、またギュッと絞られる。 由衣は、胸を締め付けられたが、声を出さずに耐えた。 「いいわ。それじゃ最後ね。ロープの反対側と結んでちょうだい。緩まないように気を付けてね」 「うん」と答える悠人の声は、生き生きとしていた。縄留めに、また悪戦苦闘していたようだが、何とか結び目を作ることができたようだ。 悠人が、由衣の正面に立った。 「どお、お姉ちゃん」 声が、いかにも嬉しそうだ。 何と返事をしたら良いのだろう。もう両手は動かない。縄留めの際に少しだけ緩みが出たおかげで、それほど苦しさはなかった。 綿ロープは柔らかく、二の腕や胸の柔肌に食い込んでも、痛いというほどではない。ただ、上半身の自由は、ぜんぜん利かなくなっていた。 「恥ずかしいよ。ハダカで縛られるなんて……」 由衣は上体を前に倒し、胸の露出をできるだけ隠そうとした。 首だけ上げて悠人を見上げたが、目の前に、いきり立った肉塊を突き立てられ、息が止まるかと思った。 (あんなになってるなんて……) 由衣は、悠人のおちんちんを、初めて怖いと感じた。 ますます身体を丸める由衣だが、悠人は許さない。由衣の目の前に片膝を付いた。 「ねえ、立って見せてよ」 大きく逸らした由衣の顔を、悠人は、のぞき込むように追いかける。 「お願い、勘弁して」 「ダメだよ。お姉ちゃんの縛られた姿を見たいんだ」 悠人が、由衣の両肩を掴んだ。 全身が強張る。 「やめて」と口にする前に、由衣の身体が宙に浮いた。悠人に抱きかかえられたのだ。 由衣は、掛け布団のめくられたベッドに、仰向けに寝かされた。 悠人は、仁王立ちになり、腰の凶器を直立させて、由衣を見下ろした。 無防備な裸身を晒す恥ずかしさは、今までと比べものにならない。それ以上に由衣は、身の危険を感じていた。 悠人のおちんちんに、心から恐怖を感じた。 「お姉ちゃんの乳首、大きくなっているみたいだ」 悠人が、手を伸ばして来た。 「触っちゃダメっ!」 逃げようにも、両手の自由は奪われている。寝返りを打って悠人の視線から逃れるくらいがせいぜいだ。 これが縛られるということなのか。 由衣は、手首を擦り合わせ、肩を揺すってみたが、殆ど遊びがない。もしかしたらと試してみたが、ロープが緩む気配すらしなかった。 「ほどいて、悠人。このロープを、ほどいてちょうだい」 目尻に涙が滲んだ。このままでは、最悪の事態になりかねない。 「ダメだよ。何のために縛ったんだか、わからないじゃないか」 悠人が、由衣の背中に抱きついた。掛け布団も引っ張った。由衣と悠人は、二人して全裸のまま、布団に入った格好だ。 「いやっ。ダメよ、悠人。そんなのダメ」 「そんなのって、何だよ」 悠人は、由衣の首に回した腕を離さない。カチカチになったおちんちんの先が、由衣のお尻の肉に突き立てられた。 「悠人、やめて。こんなの、いけないことなのよ」 由衣は説得を試みる。 「大人しくしてよ」 悠人の言葉に怒気が込められた。両腕に力を込め、縛られた手首ごと、しっかりと抱きかかえたまま、動こうとしない。 縛らせたりするんじゃなかった。 由衣は、後悔していた。悠人も男の子だ。こうなることは、わかっていたはずなのに、なんではっきりと拒否しなかったのか。 自分から、縛られるための協力までしてしまった。最後までしてもオーケーなのだと、悠人が誤解するのも無理はない。 でも、姉弟でするなんて…… 由衣は、完全に混乱していた。 何とか逃げる方法はないか。悠人を説得する言葉はないか。全裸の身を後ろ手に縛られている由衣には、どちらの方法も思いつかなかった。 どれくらい時間が経っただろう。由衣の肩に、なま暖かい息が掛かるのを感じた。 悠人は、何もしてこなかった。 いつの間にか寝てしまったらしい。時計を見ると、午前一時を過ぎていた。 (つづく)
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